山際総料理長ロングインタビュー[1]
食材に秘められた物語、農家のこだわりを料理人として食べる人に伝えていきたい
1. まず有機野菜に興味を持たれたきっかけをお教えください
有機野菜を広める活動を行っている二本松有機農業研究会で、ツルムラサキを作っている農家さんに出会ったのが最初のきっかけです。ツルムラサキってなかなか食べない食材ですし、我々も使うことがないんですね。でも素晴らしいツルムラサキがあるからということで行って、生で食べさせてもらったらすごくおいしい。自分の今までのイメージと全く違う味わいだったので驚いたんです。そこから興味が湧いて研究会の方々とお話するうちに、メンバーを紹介してもらうようになり、農家さんとの関係の輪が広がっていきました。
2. それから福島県内の農家を訪ねるようになったのですか?
そうですね。15年前のことです。3年間かけて福島県の市町村すべての有機農業の農家を訪ねて歩きました。二本松有機農業研究会や役場で農家を紹介してもらい、直接足を運んで農作物を見聞きし、食材マップを作成したのです。私の作ったこの食材マップと、福島県が出している食材マップは全然違うものです。なぜかというと、県のデータベースは大量に安定的に供給できる食材だけなんですね。私のデータベースは、少数だけれどその時期にどこで何が収穫されているかがわかるもの。この活動を始めた当初は2、3品だけの仕入れでしたが、現在は年間70の農家さんから様々な食材を仕入れています。今ではそうした農家さんがいなかったら我々の会社は成り立たないほど。私にとっては農家さんとの顔が見える関係が一番の宝物ですし、地産地消の方向性を見つけてすごく良かったと思っています。
3. 15年前というと「地産地消」の考えはまだ一般的ではなかったと思います。周囲の反応はいかがでしたか?
社内でも最初は反対の声が挙がりましたね。「ホテルの料理には、えび・かになどの華やかさが必要だ」と言われました。でも私は、なぜ福島まで来ていただいてえび・かにを出すのか疑問だったんです。他でやっていることをうちで真似しても、わざわざお客様は来ないでしょう。うちならではの特色を出さないと。じゃあ、えび・かにに代わる食材は何かと考えたときに、福島には豊かな農産物がある。それで勝負しましょうと提案したわけです。
4. 有機野菜が主役のメニューを提供されるうえで、何か課題はありましたか?
いかにサービススタッフがお客様にその食材のこだわりを伝えられるか、です。つまり食材がもつ「物語」をどれだけ語れるかですね。単純に「大根の煮物です」と言うのと、「料理長自ら農家のところに出向いて選りすぐった有機栽培の大根を使っています」と言うのでは、全然インパクトが違う。ですからうちでは、メニュー会議のときにスタッフ全員に試食をさせて、食材のこだわりや農家の名前などをメモ書きするように指導しています。そしてわからなければ、自分で調べてこさせる。自分で調べて理解すると、お客様にもしっかりと説明できるようになります。